腎臓について

 五臓六腑と呼ばれる中に腎臓が含まれています。腎臓が体内でどのような働きをしているか、ご存知でしょうか?「尿をつくる」というイメージが多いと思いますが、身体にとって大切な働きをしています。

 今回は腎臓の働き、そして腎臓に障害が起きた場合について説明していこうと思います。

 

《 腎臓の機能 》

 腎臓内には、ネフロンと呼ばれる部位が多数あります。腎臓は左右2つあり、その中にヒトでは200万個、犬80万個、猫40万個のネフロンがあります。このネフロンが尿を作成するなどの働きをしています。

 まず、大きい働きとしての尿の作成には「ろ過機能」と「濃縮機能」という働きがあります。

  • ろ過機能 

    腎臓に入ってくる血液をろ過し体内に不必要なもの(アンモニアなど)を体外

    に出そうとします。

  • 濃縮機能

    ろ過されたものから再利用できるものを再び身体に取り込みます。

 

 この二つの働きで身体の水分調整を行っているのです。ヒトでは1日に200リットルろ過し、尿として1リットル排出しますが、残りの190リットルは濃縮機能によって身体に残り、循環しています。10kgの犬では1日53.3リットル程度がろ過し、尿で0.2~0.25リットルが排出されます。残りの約51リットルは濃縮機能によって身体に残り、体内を循環します。

 その他の働きとしては赤血球造成の指令を出すホルモン分泌、血圧の調節、ビタミンDの活性化があります。

 

 始めに腎臓の濃縮機能に支障が出始め、症状が顕著になってくると、尿が薄くなったり尿量が増えたりします。その為、飲水量も増えてきます。

 

 ただし腎臓病の症状として現れ始めるのは、腎臓にあるネフロンの数が33%を切ってからだと言われています。

  1.  残りのネフロン数が100~33%では無症状、検査上異常なし。
  2.  33%以下で多飲多尿・脱水、尿検査で薄い尿がみられる。(濃縮機能の低下)
  3.  25%以下では嘔吐・食欲不振・元気消失など症状が発現、血液検査で高チッ素血症・尿毒症・貧血がみられます。(ろ過機能の低下)

 

 腎臓病は徐々に進行していきます。さらに一度壊れた所は治りません。ネフロンは壊れていくと残ったネフロンが機能を維持する為にその分まで働くようになります。

 

 [例] ネフロンが50%壊れる→残りのネフロンが2倍の仕事を行う⇒腎臓の負担増

 

 保存療法(病気の進行を遅らせる事)で腎臓に負担をかけないようにしていく事が第一となってきます。

 まず食事の見直しが大切です。蛋白質が多いと尿素窒素が増える原因になる為、低蛋白なものに。またリンはネフロンの数を減少させてしまう作用がある為にリンの制限がされたものに切り替えていきます。その際には動物病院で扱っている療法食をお勧めします。腎臓病用の療法食は一般に市販されているフード(ドライ)よりも蛋白質が10%程少なく、リンは半分以下程度に抑えられています。

 食事療法を始める事で生存期間率が2~3倍伸びる事が研究により証明されています。ただし腎臓病がかなり進行した状態では食欲が落ちている事が多い為、腎臓病と分かった初期からの食事療法が大事になってきます。

 その他には、濃縮機能低下により身体の外に出ていく水分量が増えた事で起こる脱水を防ぐ為には点滴を行ったり、腎臓の負担を減らす為の投薬を行う事があります。


 猫では15歳以上の30%が慢性腎臓病というデータがあります。腎臓は元通りに治すことが出来ない為、早期発見が大切になってきます。中齢期(犬5~7才、猫7才以降)から定期健診で血液・尿検査をする事をお勧めいたします。尿検査の場合はなるべく新鮮な方が良い為、可能ならば採取した2~3時間以内、それが無理なら冷蔵庫で保存し、その日の内にお持ち下さるとより正確に検査が行えます。


 腎臓病は、食べ物が身体にとってどれほどの影響があるのか良く分かる病気と言っても過言ではないと思います。ヒトの食べ物を食べている子ほど塩分摂取量が多く高血圧になり、腎臓のみならず心臓や肝臓など様々な身体への負担が増加します。犬や猫は人間と必要な栄養バランスが異なります。普段から与えている食ベ物の成分を気にしてみると良いかもしれません。

 

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